船井幸雄・語録から
私は人生の生き方について、船井幸雄先生からきわめて多くのことを学ばせて頂きました。そして今でも毎月、カセットテープ「船井幸雄本物トーク」を欠かさず聞いていますし、毎週の「週刊フナイFAX」も愛読、とくにその冒頭の「船井幸雄・語録」をいつも楽しみにしています。
この8月は2回に分け「本物の経営」について掲載されていましたので、その要約を紹介いたします。経営にはアメリカ型と日本型がありよく比較されますが、日本型経営の方がはるかに本物に近い経営法と思います。本物を端的に言えば、「天の理・自然法則」にかなったもののこと。つまり日本型経営とは
第一は「性善説の経営」で、従業員はサボることを前提にしたアメリカ型のマニュアル化とは違います。
第二は「どろ縄式の経営」で、状況が変わればすぐに計画を変更すればよいというのが特徴です。
第三は「しっかり働いてもらい、しっかり配る」。社員を大切にし利益を分配、経営者への昇格可能も特徴です。
第四は「自己主張を抑える経営」で、個人の評価よりも集団和を尊重し、個人の評価をあまり求めません。
第五は「長所進展法」で、役所や大企業ではつい減点法のためことなかれ主義になり勝ちですが、その逆です。
第六は「他者を活かす経営」で、企業間競争でも相手をつぶすまで戦わないのが日本型です。
第七は「社会性の追及が第一」が根底にあり、世の中のためになってこそ利益が出せる時代といえます。
第八は「教育制の追及を収益性よりも大事にする」という風潮、豊かな人間性の追求を心掛けていることです。
第九の結論として、日本型経営とは自然の摂理に従った経営で、この方法を自信をもって実践して頂きたいと。
まさにこれからはいよいよ本物の時代、経営者として日本型経営を心すべきと思います。
(問い合わせは「週刊フナイFAX」TEL03-3809-6140 FAX0120-024-271、「月刊カセット情報」TEL03-5769-3721、FAX03-5769-3200です)
私が見た流通業での成功者
さて船井先生の語録から私が見聞した経験を通じ、成功者の条件を5つにまとめてみました。
1.本業に徹したこと
今からほぼ10年前までは、流通業の大手の経営者の方々とは商業界ゼミナールと各地での同友会、コスモスクラブ(船井総研の各種研究会)、フィーチャークラブ、ペガサスクラブなどで勉強する機会を通じて流通業界にお知り合いがたくさん出来ました。
その成功者の殆どは本業にきわめて熱心で、お店周り以外は勉強会や見学に費やすことはあっても、趣味などに費やす時間は全くないのが普通でした。ロータリーやライオンズクラブといった団体のメンバーも少なかったようです。
私もこれを見習い、26年前に社長に就任したとき、ゴルフをきっぱりやめ、会員権も売り払いました。猫も杓子もゴルフに興じた時代でしたが、地域・業界の理事長を2つも引き受けさせられ、「理事長のご都合のいい日にコンペをやりたい」を避けるためでした。
2.勉強好き
流通業の大手の経営者はセミナーや勉強会にはきわめて熱心で、殆どの人は「講師の一言一句も聞き漏らすまい」の姿勢。前の席は取り合いでダイエーの中内
功さんはいつも演壇の真下でした。
彼がまだダイエーを始める前のサカエ薬品時代、私が訪問した2日あとに私共の店を見学にこられたし、そのときに話した小倉市の丸和フードセンター(「風車のある主婦の店」の前身)へ早速見学に行かれたのでした。
また、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんは会長になられたあとも、横浜の新商業施設のオープン直後にバッタリ顔を合わすなど、絶えず業界の変化と将来への展望を心掛けておられました。
渥美俊一先生のペガサスクラブの海外流通業見学セミナーは若い人向けのきわめてハードなスケジュールでしたが、殆どの流通業のトップはそれらにも熱心に参加されていました。
3.謙虚である
むかし大阪府知事をされていた左藤義詮先生が神戸高等商船学校の教授をされていたとき、「実るほど頭をたれる稲穂かな」の句で人生のあり方を教えていただいたことがありましたが、この態度と成功者とに相関関係がある気がしてなりません。
かつてイトーヨーカ堂へ子会社が製造するエプロンを売込みに行ったことがありました。その時は担当者との商談でしたから、社長の伊藤さんには声をかけずに帰りました。あとで訪問した旨の手紙を出したところ、「なぜ顔を見せなかったのか、特徴のある品ができれば一番に見せてほしい」と、丁重な手紙が届きました。もちろん口座はその後程なく開かれ、長年にわたりご愛顧を頂いたのでした。
ジャスコさんにはあるお得意先のお店とSCの隣接地に関して問題が発生し、当時会長の岡田卓也さんに手紙を書きました。殆ど日時をおかず、ご子息の元也社長からじきじきお電話があり、早急に解決出来たのでした。
ジャスコさんがまだ岡田屋と言われたころ、商業界の同友数名と四日市市新道のお店を訪問したことがありました。その時、初対面の私たちに店内はもとより屋上まで上がって将来発展の構想を語っていただけたのでした。こうした親切ぶりが後になって各地の有力企業との大同合併、ヤオハンやマイカルの救済、イオン系SCの大発展などにつながったと思います。
4.新しいものへの挑戦
「チャンスの女神には後ろ髪がありません」という教えがあります。刻々世の中が変わりつつあるのに過去と同じやり方では時代から取り残されてしまいます。売る品、売り方、売る場所は常に大きな変化を繰り返しています。
私はかつて第二電電(現在のKDDI)が発足したとき招かれ、社長の稲盛和夫氏より通信事業への見通しと将来への抱負を聞いたことがありました。十数年前のことでしたが、その後通信の内容、速度、範囲、便宜性など、驚くばかりの進歩で、その先見力の確かさに敬服したものです。
稲盛さんには商業界の近畿ゼミナールにおいて、特別講師のご講演をお願いに上がったことがありましたが、仏門でのご修行の日程などと重なり、実現しなかったのは残念でした。
5.運と健康
「終わりよければ全てよし」という言葉がありますが、企業の発展と同時に健康かつ長寿がベストの人生です。
流通業における私の友人に、若くして亡くなられた方が少なくありません。親しかった人に鈴木清一(68歳・大阪、ダスキン)、西端行雄(66歳・大阪、ニチイ)、野口五郎(59歳・京都、タカラブネ)、中野富雄(64歳・名古屋、ヤマナカ)の方々がおられます。
この人達は健康運に恵まれなかったのですが、私が感じるところでは生活習慣、とくに心のもち方が大きく関係していたと思います。共通していえることは、どの方も心からの善人で自己反省の強過ぎる人ばかりでした。
亡くなられた経営コンサルタントの一倉 定先生の口癖「電信柱が高いのも、郵便ポストの赤いのも全て社長の責任」の心構えは素晴らしいとは思いますが、過度の心労を避ける方法、今はやりの鈍感力での対処法も必要かと思います。
この点では金沢の「芝寿し」の創業者で現在は相談役の梶谷忠司さん(93歳)の生き方はすばらしいです。常に前向きで、今も若い経営者に「伝統にあぐらをかいては発展しない。新しいだけでもすぐになくなる。古くて新しいもののみ永遠不滅」と、語り続けておられます。
私は放送大学の大学院はこの春に修了しましたが、今度は科目履修生として主に生き甲斐や健康問題の研究を始めています。来月からのこの欄でも紹介し、皆様にとって少しでも幸せな生き方についての参考になればと念願をしております。
( エルダー 粕 井 貫 次 )
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船井幸雄先生
ニチイの西端行雄さん
「芝寿し」の創業者、梶谷忠司さん
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